蕗屋は、真青になった顔の、額の所にビッショリ汗を浮かせて、じっと黙り込んでいた。

 彼はもうこうなったら、弁明すればするだけ、ボロを出すばかりだと思った。

 彼は、頭がいいだけに、自分の失言がどんなに雄弁な自白だったかということを、よくわきまえていた。

 彼の頭の中には、妙なことだが、子供の時分からの様々の出来事が、走馬燈の様に、めまぐるしく現れては消えた。

 長い沈黙が続いた。

 「僕にとって好都合だったのは、あなたが世間並みの裁判官や犯罪者より、十倍も二十倍も進んだ頭を持っていられたことです。

 つまり、急所にふれない限りは、出来るだけあからさまに喋ってしまう方が、かえって安全だという信念を持っていられたことです。

 裏の裏を行くやり方ですね。そこで僕は更にその裏を行って見たのですよ。

 心理試験というものは、必ずしも、書物に書いてある通り一定の刺激語を使い、一定の機械を用意しなければ出来ないものではなくて、今僕が実験してお目にかけた通り、極く日常的な会話によってでも、十分やれるということです。」

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